かれこれ卒業して30年経ちますが、母校上田安子服飾専門学校にて、舞台衣装についての特別講義をさせて頂きました。
5年程前に舞台衣装専攻コースができ、現在3年生40名、2年生30名の学生が在籍しているそうです。
2.5次元等の舞台衣装に携わりたい人、アイドルの衣装を手掛けたい人、テーマパークやサーカスの衣装や、劇団式、宝塚歌劇団等をつくりたいという夢を持っている学生の他にも、衣装の縫製に携わり人もいる中、実際学生たちが知りたいことを事前に質問して頂き、講義の内容を組み立てることにしました。
役割と立ち位置について
一概に「舞台衣装」と言っても、衣装デザイナーと衣装製作の仕事は全く別の仕事になります。
大きく分けると以下のようになります。
舞台衣装デザイナー(プランナー)の仕事
1. コンセプトの立案
脚本を読み込み、演出家や振付家と作品全体のテーマやコンセプトに基づいて衣装の方向性をすり合わせ決定。歴史や文化的背景、ストーリー全体の世界観を深くリサーチし、舞台美術や照明とも調和する衣装の方向性を設定します。
2. デザインの作成とプレゼンテーション
脚本を元に必要に応じて衣装香盤表を制作。衣装のスケッチやイラストを描き、素材や色の選定を行い、衣装の具体的なビジュアルイメージを形にします。
この際、素材や装飾、形状において実現可能性を考慮しつつ、オリジナリティのあるアイデアを盛り込むことが求められます。
キャラクターやシーンごとに衣装プランを作成し、クライアントや制作チームにプレゼンテーションする。
3. 素材の選定と提案
衣装の機能性や舞台映えを考え、布地や装飾の素材を選定します。動きやすさ、耐久性、光の反射などを考慮し、最適な素材を提案するのもプランナーの役割です。
4. 予算管理
衣装製作にかかる全体のコストを算出し、予算内で最大限の効果を発揮できるプランを構築します。高価な素材や装飾の選定には、コストパフォーマンスも重要な判断基準となります。
5. 製作チームとの連携
製作チームと密接に連携し、衣装がデザイン通りに仕上がるようプロセスを監修します。フィッティングや製作途中の確認を通じて、クオリティを保ちながら修正や調整を指示します。
観客を物語の世界に引き込むために、「衣装」をどのように配置展開していくのかを構築するのが舞台衣装家の仕事です。衣装の設計図を考えるのが仕事といえば分かりやすいでしょうか。
舞台衣装製作の仕事
1. 衣装のパターン作成
プランナーのデザイン画をもとに、衣装の型紙を作成します。この作業は衣装のシルエットを形作る基盤であり、正確な採寸と構造計算が必要です。
また、劇場の大きさに応じて、使用する生地の分量を変える等、サイズだけでは測れない臨機応変な判断が求められます。
2. 素材の加工・縫製
選定された布地を裁断し、縫製を行います。衣装のデザインと機能性を両立させるため、繊細な技術と効率的な作業が求められます。
装飾の取り付け
ビーズ、刺繍、レースなどの装飾を施し、デザインの細部を再現します。舞台上で映える装飾は、手作業で丁寧に取り付けられます。
4. フィッティング対応
俳優やダンサーとのフィッティングを実施し、衣装のサイズや形状を調整します。動きやすさや快適性を確保しつつ、デザイン性を保つことが重要です。
5. 耐久性・機能性の確認・修繕対応
舞台での動きやパフォーマンスに対応できるよう、衣装の耐久性や着心地、パフォーマンスによる着衣の乱れを確認・改善。公演期間中の修繕やメンテナンスを担うことも、製作担当の大切な役割です。